「会議後の議事録作成に時間がかかる」「誰が何を言ったか曖昧」
――そこで注目されているのが、議事録AI:議事録の自動化。音声を文字に起こし、要点を抽出し、タスクや決定事項を整理してくれるAIツールです。
実際、生成AIを活用した議事録ツールを活用することで、議事録作成にかかる工数を大幅に削減できるという報告があります。ただし、ツールを導入すればすぐ効果が出るわけではなく、「運用ルールの設計」「会議設計との整合」「社内文化への定着」が鍵になります。
本稿では、①「導入前後の会議設計変化」②「使ってはいけない落とし穴」③「国内中小企業・自治体での活用ケース」 にもフォーカスし、より実践的にご紹介します。
まず基本として、生成AIを活用した議事録の自動化の仕組みと現在のトレンドを押さえましょう。
音声認識・文字起こし:会議中または録音データを文字化
発言者識別:誰が発言したかを可能な限り特定
要点抽出・要約:長時間の会議を「決定事項」「次回アクション」に整理
キーワード検索・履歴管理:過去の会議記録から情報を再活用
生成AIとの連携強化:音声文字起こしだけでなく、生成AIによる議事録の「読みやすい文章化」「次回議題提案」まで進んできています。
専門用語・組織辞書学習機能の充実:業界特化型(製造、行政、医療)で単語登録やカスタム辞書を備えたツールが増加。
中小企業・自治体での導入実例増加:従来は大企業・IT企業向けが中心でしたが、導入スキームが簡易化したことで、中小企業・自治体での導入も増加
決定事項の明確化・タスク追跡化:重要な発言やアクションをAIが抽出することで、「誰が何をいつまでに」という可視化が可能。
ナレッジの蓄積と共有化:過去会議の記録を検索可能にすることで、瞬時に情報の追跡が可能。
運用ルール・フォーマットの見直しが必要:AIツールを入れただけでは、出力された議事録を活用しづらいことも。
プライバシー/セキュリティの配慮:クラウド連携や多言語翻訳など機能拡張される一方で、機密性の高い会議にはツール選定が重要。
ここでは “会議そのものをどう設計し直すか” に踏み込んで解説します。
AIツールによっては「誰が何%発言しているか」などの割合を出せるものがあります。
例えば、発言の偏りが「上司:80%、部下:20%」という場合、議論が一方通行になっている可能性があります。ここを“AI議事録を振り返る指標”として会議後レビューを行うと、次の会議の質が上がります。
会議後に「決定事項」と「担当者」「期限」「次回確認ポイント」をAI議事録ツールで自動ラベリングできるよう、会議中に「次回までに誰が何をするか」を必ず明言しておくルールを設定しましょう。
こうすることで、議事録は“行動を起こすための素材”に変わります。
大手企業と同じように「会議に専任議事録担当者がいない」「定例会議とプロジェクト会議が混在する」などの課題を抱える中小企業・自治体だからこそ、生成AIを活用した議事録の自動化に向いているポイントがあります。
複数部門・リモート参加が混在する会議:発言者が多く、誰が何を言ったか把握しにくい場面で、発言者識別+要点抽出が効果的。
定例報告→次回タスクまで流れが曖昧な会議:決定事項がその場限りになってしまうので、AIで記録・可視化することで、次回タスクまで明確にできます。
教育・記録の透明性が求められる自治体・公共機関:議事録を公文書のように残し、検索性や共有性を確保できます。
無料プラン、トライアルを持つツールからまずテスト導入。
月1~2回の会議で試験運用し、効果が出そうな会議タイプに絞る。
出力フォーマット(PDF・Word・Excel)をあらかじめ社内テンプレートにあわせておく。
導入初期は「議事録を確認する役」「AI出力を会議後5分以内に共有する役」を定め、運用クセをつける。
ツール選定時・導入前に押さえておくべきポイントです。
音声認識精度(専門用語・雑音環境での実績)
話者識別機能/発言者ラベル出力機能
要約・タスク抽出機能(「決定事項」「次回アクション」など)
出力形式の柔軟性(Word・Excel・PDF・クラウド共有)
Web会議ツール(Zoom・Teams・Meet)との連携性
セキュリティ・プライバシー(データ保存場所/学習用途の可否)
導入支援・運用サポート体制(テンプレート提供・辞書登録代行など)
会議のクオリティを整える:曖昧な目的・アジェンダでは、AI出力も曖昧になります。「発言者を明確に」「決定を明文化する」ルールをセット。
出力を“使える”形に整備する:出力された文字起こしをそのまま放置せず、「見やすさ」「担当者・期限付きのタスク化」を行う。
運用を社内文化にする:ツール任せにせず、議事録の確認・共有ルールを明確に。導入初期は担当者を決めて“振り返り”を行う。
過剰期待をしない:音声認識の完璧化・発言者識別100%は困難。「誤変換・重なり発言あり」を前提に、修正フローを設ける。
継続的な改善を行う:AIが抽出する要点・タスク項目を毎月レビューし、議事録テンプレートや会議フォーマットをブラッシュアップ。
議事録の自動化は、単なる文字起こしツールではなく、会議そのものを「議論→決定→実行」までシームレスにつなげる 会議運営の土台革新ツール になり得ます。
ただし、それを活かすには、ツールを導入するだけで終わらず「会議設計」「議事録設計」「運用フロー設計」までをセットで見直すことが肝要です。